第134回
名称未設定。
Sohara Presents
第0回の課題文にある通り、我々学生は指導的立場に在る人々からの問に対し応えるのみである。このとき、学生は課題文と同時に制約を受け取る。制約は設計手法を知らない学生のための支援となり、思考のプロセスを誘導する役割があるのだ。
世界で最も成功した美術館のひとつであるMoMAでは、絵画や彫刻だけでなく、写真、映画、建築にも独立したキュレーター部門を設け、多角的な展示を行っている。(引用
著:難波祐子『現代美術キュレーターという仕事』)この現実がある限り、建築は芸術の一分野に数えられてもおかしくは無い。しかし、先に挙げた5分野の中で「建築」だけ異質な存在である。建築のみが、初めから敷地条件や法規、クライアントの意向など、目を背けられない制約が存在し、まっさらなキャンバスを目にすることがないのだ。
「建築を学ぶ人は、制約がないときどのような作品を創るのだろう」
私は非常に興味がある。四半世紀も生きていない若人が、どのようなものを作るのかを。
参加者に完全にまっさらな状態から作品を作って貰いたいが、それは「完全にまっさらな状態から作品を作ってください。」という制約を設けることになり、矛盾が生じる。そのパラドックスをできる限り回避すべく、参加者に「名称未設定とはどういうものなのか」ということを考えて頂きたい。
Illustratorを起動した時、最初のドキュメントは「名称未設定.ai」で保存される。大学生活の殆どを制約の元で過ごしてきた建築学生は、名称未設定の白いキャンバスをどう捉えるのだろうか?
(曾原翔太郎)